平和の少女像

 

その少女は軽く握った手を膝にのせ、椅子に座っている。

左の肩には小鳥がとまっている。

その少女は朝鮮半島の民族衣装を着ている。

椅子に座った少女の足は地面に届かず宙を浮いている。

 

少女は第二次世界大戦中の日本軍の従軍慰安婦であるという。

宙を浮いた足は、少女に安住の地がないことを象徴しているという。

 

この像の名前は「平和の少女像」という。

戦争による性暴力の被害者を思う気持ちを込めて、この像は制作された。

この像の隣には空席の椅子がある。

誰でもそこに座ることができ、少女に寄り添うことができる。

 

少女の切れ長の目はただ前方を見ている。

そして、その表情から感情は読み取れない。

 

この少女を前にして、一部の日本人は平静さを失う。

足蹴にする。少女の頭に紙袋をかぶせる。

この少女を「日本人の心を踏みにじるもの」とののしる。

ある種の日本人男性は、そのまなざしに感応し、うろたえ、みっともなく暴れるのだ。

 

少女は表情を変えない。

みっともない男たちを前にして、ただそこにいる。

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