初期詩篇 二題

   やりきれない僕たちの終わりに

 

やさしい青春の終わりには、

強い酒の匂いと遠く青い海がよく似合う。

 

さびしい時代の終わりには、

小さな田舎の駅に降りる旅がよく似合う。

 

自分のために流す涙を、

僕は多くもちすぎたのかもしれない。

 

酒精に麻痺した頭のどこかで、僕は、

僕たちの終わりを予感した。

 

例えば、君が僕を愛していてくれていたとしても、

僕はこのひとつの結末に、

自分のために涙を流していただろう。

 

嵐のような一日の終わりには、

やさしい歌がききたい。

 

何の意味もないような

やさしい歌がききたい。

 

僕がしたかった旅は、こんな旅でなく、

もっと何もない旅なのだ。

 

いつまでも、

いつまでも続くような秋の日に、

僕の青春はやさしく終わる。

 

それが本当か本当でないか、

僕自身も知らないことなのだ。



 

   宿酔

 

哀しくもやさしい君の歌をききながら、

僕はひとり煙草に火をつける。

 

哀しい空をとべない僕は、

僕自身を撃つために弾丸をこめる。

 

遠いはずだった幸福の向こう側に、

もっと大きな不幸があって、

哀しい空をとべない僕は、

冷たい目をすることができない。

 

秋に胸をひらいた君と、

もはや冬しか見えない僕と、

一緒に駄目になっていくためには、

淋しさの二乗の速度で幸福を投げ上げなければならない。

 

くり返し、くり返し、苦渋の紙ひこうきを折りながら、

哀しい空に、うすっぺらい僕を乗せてとばす。

 

その行為は、ただ単に行為であって、

君はうれしそうにそれを見ている。

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